著者 |
斎藤孝 |
出版社 |
文春新書 |
出版年月 |
2003年6月 |
価格 |
\700(税別) |
入手場所 |
平安堂書店 |
書評掲載 |
2003年7月 |
評 |
★★★★☆ |
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日本のトップアスリートのなかには、マンガの影響を受けてスポーツを始めたという選手は決して少なくない。 かっこよく描かれた登場人物たち、華麗な動き、そして目標に向かってひたむきに練習を重ね、それをクリアしていくストーリーは、少年たちにはたまらなく魅力的だ。 本書は、そんな数々のスポーツマンガのなかから、著者が厳選したという7作品について、その身体表現に注目しながらスポーツマンガの魅力を探っている。
その厳選された7作品とは、「巨人の星」「あしたのジョー」「スラムダンク」「バガボンド」「バタアシ金魚」「ピンポン」そしてわれらが陸上界を代表して「奈緒子」が題材になっている。 はじめの2作品はもはや伝説的な大御所作品。次の2作品は最近のメジャー作品。あとの3作品はややマイナーではあるが、それぞれの絵に表現された個性的なキャラクターたちが、独特の世界観を生み出し、少年たちに強いメッセージ性あるセリフを発しているという点では、いずれの作品も傑作であろう(「バタアシ金魚」はやや趣がことなるが)。
スポーツという身体感覚を、言葉だけで説明することは容易ではなく、読み手にとってもとっつきにくい。しかし、マンガという親しみやすい媒体を介して、登場人物に語らせることによって自然と理論的な内容が吸収することができることを、この本は教えてくれる。 つまりマンガとは、スポーツ少年たちにとって最高の教科書であると言っても言い過ぎではないと思う。 こうやってマンガの効用を探っていくと、日本が発明した「マンガ」文化というのは、もしかしたらものすごい可能性を秘めた媒体なのかもしれない。
私の感想としては、サッカー代表として「キャプテン翼」を加えてもよかったと思う。 『ボールはともだち』という名セリフに、どれだけの少年がサッカーボールに親しみ、怖がらなくなったことだろう。 カバーデザインも、(統一されたシリーズデザインとはいっても)あまりに淡泊で、これでは誰も手にしないのではないだろうか・・・。
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