著者 |
中野ジェームズ修一 |
出版社 |
ソフトバンク新書 |
出版年月 |
2009年9月 |
価格 |
\760(税別) |
入手場所 |
平安堂書店 |
書評掲載 |
2009年10月 |
評 |
★★★☆☆ |
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空前のランニングブームだ。 長野マラソンは募集開始からわずか数時間で定員に達し、東京マラソンは倍率10倍近い狭き門となっている。いや、それだけではない。本書によると、皇居周辺は、ランナーであふれかえり、周辺の銭湯はこの不況のなかでも大盛況だというではないか。 つい最近まで考えられなかった現象が起きている。
そこで増えてきているのが、ランニング初心者を対象としたコーチング本だ。 私も、長年陸上競技の長距離種目を経験してきただけに、ランニングに関する留意点や、故障の対処法について尋ねられる機会があるのだが、ふと回答に窮してしまう質問が少なくない。 たとえば、「呼吸はどうすればいいの?」と聞かれても、意識して走っているわけではないから、「(ハテ、どうやっていたのだろう?)」と自分が走っている時の様子を思い出しながら、「自然な感じで・・・。」などと適当なことを言ってお茶を濁してしまう。 そんなことに悩んでいた折に、書店に並ぶ数々の書籍のなかから、手頃なサイズでポイントが絞られた内容のものを探していたら、本書にたどりついた。
本書の著者略歴によると、著者は著名なプロアスリートのパーソナルトレーナーを務め、雑誌の連載や講演活動も精力的にこなしている人気トレーナーだそうだ。 もちろんランニング初心者に対するコーチングにも定評があり、自身もフルマラソン・サブスリーを目指して日々トレーニングに励む現役ランナーのひとりだ。 それだけに、ランニング初心者が気をつけるべき点について、分かりやすい例を挙げながら、かつコンパクトにまとめられている。 また、このような初心者対策本は、えてして専門用語を極力避けてしまい、かえって分かりにくくなる傾向が見受けられるのだが、本書は筋肉の名称や、生理学的な用語についてもきちんと専門用語を使ったうえで図解していて、好感を持てる。
加えて、本書には、ランニングの技術や練習法に関する内容だけではなく、単調で飽きやすいトレーニングを続けるための数々のモチベーション対策も掲載されている。 お気に入りのホームコースを作る、インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用して、ランニング日誌をつけるなど、いますぐできるようなモチベーション対策がたくさん紹介されていて、大いに参考になる。 ただ、著者は東京を拠点に活動しているためか、「ランナーズステーション」の活用など、一部の大都市での練習を前提にした記述が多かったことに加えて、科学的には若干マユツバ気味の甘言が気にはなったのだが、全体的には、ランニングは難しいと考えてしまい、なかなか外に飛び出せない方には適している一冊だろう。
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