ツイッターやSNSといったソーシャルメディアが一般的となり、情報の発信方法が多様化してきている。
陸上競技の世界、いやスポーツの世界でいちはやくその活用方法に注目し、積極的な発信を続けてきたのが、著者の為末大だろう。
為末といえば、中学時代よりその才能が注目され、高校3年で迎えた地元・広島国体では、400mハードルで規格外の高校記録を叩き出し、その大記録は25年以上経ったいまも破られていない。
私も同年代として彼の活躍を楽しみしており、2001年エドモントン世界選手権で銅メダルを獲得したレースは、いまも私の脳裏に残っている。
大学卒業後は実業団の大阪ガスに入社したものの、24歳でプロに転向し、自らスポンサーを探しながら世界を転戦してきた。
そんな強い覚悟を持って生きてきた著者の語る言葉はどれも重く、なるほどこんな考えがあるのかと感心させられてしまう。
本書は、2010年頃から著者が始めたツイッターから厳選した「つぶやき」をまとめた一冊で、編集者あとがきによると、あまりにも内容の濃いツイートに居ても立ってもいられず、「書籍化させてほしい」 (P223)と直談判して叶えられたという。
編集という仕事がら、玉石混交のツイートを読むことが少なくないそうだが、驚くべきことに為末さんの言葉は、ツイートはもちろんインタビューさえ、編集がほとんど必要ないくらいに洗練され、無駄な表現がない。いかに普段から繰り返し咀嚼し考えつくされているかの表れと思う (同)と、コンパクトに自分の意見を伝える技術の高さに舌を巻いている。
ツイートの編集版という構成のため、テーマ完結型の短文は隙間時間に読むには最適だ。
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