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山梨学院大学箱根駅伝物語

山梨学院大学箱根駅伝物語
著者 佐藤眞佐美
出版社 山梨ふるさと文庫
出版年月 1993年
価格 \1,500
入手場所 N蔵書
書評掲載 2001年2月
★☆☆☆☆

 地方の無名私立大学のひとつに過ぎなかった山梨学院大学が、上田誠仁氏を監督に迎え、まさにゼロからのスタートによって箱根駅伝優勝にいたる軌跡を追ったノンフィクション。

 わずか8人で予選会にオープン参加した就任1年目から、翌年には予想外の6位で本戦の出場権を得て以来、飛ぶ鳥を落とす勢いで力をつけていった山梨学院。この強さの秘密はどこにあるのだろうと、私は前々から強く興味を抱いていた。
 その秘密を握る人物は紛れもなく監督の上田氏である。その上田監督の哲学などをもっと知りたかったのだが、この本の内容は、オツオリ、イセナ選手の2名の留学生が中心に描かれている。

 長い箱根駅伝の歴史の中で、外国人留学生は初出場というだけでなく、長距離強豪国であるケニアからの留学生は、「スポーツの倫理」という点で問題を提議し、大きな論議を巻き起こした。そんな留学生問題を、この本では前向きに捉え、外国人留学生に理解を求めるような書き方になっている。

 私はスポーツ強化のための留学生の起用はあまり賛成できない(絶対反対ではない)。そんな私の考えを覆すほどの説得力は、この本から感じることはできなかったのは残念。なんだかうやむやに終わってしまったように感じる。

 ストーリー的にも、“浅い”感じがして、文章から情景を浮かべることが難しい。もっと深い取材がほしかった。しかも文章は誤字・脱字(もしくは誤植)だらけである。「スワヒリ語」なのか「ヒワスリ語」なのか!? 「オマシイレ先生」なのか「オマシレイ先生」なのか!? など、添削して著者に送り返してやりたいぐらいである(カバーに記載された「発売元」すら、誤植のためか、シールで訂正してある(『盛雲社』→『青雲社』)。こんなひどい本は初めて見た。)
 所々に挿入された、大会の写真も、文章とは関連のない年の大会の写真が挿入されていて、“普通に読む”ことのできないつくりになっているのが非常に残念。

 揚げ足取りに多くを費やしてしまったが、留学生問題以外は「夢は箱根を駆けめぐる」と似た内容(個人的には、同大学卒業生の知人が登場していたのは、ちょっぴりうれしかった)。
 ちなみに私は、高校時代に、地元の駅伝の開会式で上田監督の話を聴いて、山学に行こうかと思ったことがある。
 それほど指導の熱意がこちらに伝わってくる人望の厚い人物で、私が尊敬する人物のひとりです(それだけに、この本を読んだ後は期待を裏切られた感じ)。

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