著者 |
沢木耕太郎 |
出版社 |
文春文庫 |
出版年月 |
1979年9月 |
価格 |
\450 |
入手場所 |
学生生協 |
書評掲載 |
2001年2月 |
評 |
★★★☆☆ |
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「敗者の美学」と聞くと、なにやらかっこいい響きに聞こえたり、単なる言い訳に聞こえたりと、微妙な言い回しに聞こえる。この本は、世間からは『敗れ去った』と見られている者にスポットを当て、深い取材や研究を通じて書かれたノン・フィクション短編集である。 著者は、「敗者だなんてとんでもない」とでも言いたげなぐらいに、彼らに対して尊敬を抱いているように感じる。それは、言い換えれば勝者にしかスポットを当てられないスポーツ界の現状を皮肉っているようにも感じられる。
陸上関係では、東京オリンピックマラソン銅メダリストの円谷幸吉選手にスポットを当てた「長距離ランナーの遺書」が収録されている。後に小学館文庫から出版された「オリンピックに奪われた命(1999年・橋本克彦著)」の参考文献となっている本であるが、50ページほどの分量にコンパクトにまとめられているので、円谷選手のことを知りたいのであれば、こちらの方が短時間で読み終えられる。 だがこちらは写真も無いし、終始暗い印象で書かれている。オリンピックのことについては「メダルを取った」とぐらいにしか触れられていないのがちょっと物足りない気もする。 こちらの方は円谷選手の生涯というよりは、自殺についての遠因を探り、本当に彼はオリンピックメダリストという重圧に敗れた「敗者」であったのかを問い掛けているようにも感じられる。
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