著者 |
橋本克彦 |
出版社 |
小学館文庫 |
出版年月 |
1999年6月 |
価格 |
\590 |
入手場所 |
学生生協 |
書評掲載 |
2001年2月 |
評 |
★★★☆☆ |
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あまりにも有名な遺書を残し、自ら命を絶った、東京オリンピック・マラソン銅メダリストの円谷幸吉選手の生涯をつづった作品。 オリンピックでの“予想外の”活躍後に、周りからのプレッシャーや故障に悩まされる様子が、前半の「あれよあれよと言う間に国民的ヒーロー」となっていく様子と、対照的に描かれている。 彼はなぜ競技場で後ろを振り向かなかったのだろう。彼のすごした少年時代から、その愚直なまでのまっすぐな性格が窺える。 ところで、オリンピックチャンピオンを始め、数々のマラソンランナーを育てている小出義雄監督は、バルセロナオリンピックにおいて、有森が自殺しないように見張らせていたらしい。 また、シドニーオリンピックの選考会においても、「オリンピックなんかなけりゃいいと思った」とも語っているが、とかく繊細な心を持つ長距離走者にとっては、オリンピックというのは、“命”と同等の価値を持つほどに重要な大会なのであろうか? 私たちの世代は、円谷選手がどんな人物だったかを知るには世代が離れすぎているが、折りしも我々の年代は、わずか14歳でオリンピック金メダリストとなり、一躍国民的ヒロインとなってしまった、水泳の岩崎恭子選手と重なる世代だが、彼女のその後の不振にも似たものがあったのかのように感じられた。
オリンピックってなんなんだろう。そんなことを考えさせられたりもして、ちょっぴりセンチメンタルに浸ってしまう。
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