著者 |
奥田英朗 |
出版社 |
光文社 |
出版年月 |
2004年11月 |
価格 |
\1,400 |
入手場所 |
市立図書館 |
書評掲載 |
2005年1月 |
評 |
★★★☆☆ |
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直木賞作家が、直木賞授賞式をすっぽかして向かった先、それは、今まさにオリンピックという大イベントが開催されているアテネだった。 中日ドラゴンズを愛する熱烈な野球ファンでもある著者が、ひょんなことからオリンピックを観戦する幸運(!?)に恵まれ、長嶋ジャパンの闘いに胸を躍らせ旅立っていく。 しかし著者の目に映った“ドリームチーム”は、主砲がセコセコとバントを試み、プロフェッショナルなプレイを見せずに無残に敗れていく“敗者”の姿だけだった。 スポンサーのヒモ付きで、飛行機の上級シートで移動し、高級ホテルに滞在し、専属シェフを同行させ、・・・そしてたいした試合をしなかった。そんな落胆と怒りに震える著者の目に飛び込んできたのはスタンドで「感動をありがとう」と横断幕を掲げる日本人ファンの姿だった。 全身の力が抜ける感覚を覚えた著者が「わたしだったらこう殴り書きする」とつぶやいたのがタイトルのフレーズだ。このタイトルだけで、オリンピックに対する著者のシニカルな捉え方がよくわかる。 もちろん、野球だけではなく、女子マラソンや、他のT&F競技(為末選手らが登場)、柔道、バスケなどの競技の様子も紹介。テレビで見る様子とは全く違う感覚とのギャップがおもしろい。
これは、スポーツ観戦記というよりはむしろ、オリンピックを通じて他国の文化の多様さを教えてくれ、日本の文化(特にスポーツ観)が、実はとてもローカルな感覚なのかもしれないということに気付かせてくれる。 著者は、ギリシア人ののんびりとした国民性や、外国人の自国に対する熱狂的なナショナリズムに戸惑いつつも、それを独特の感覚と言い回しで笑いを誘ってくれる。
しかし文章が細切れの単文中心で、ボキャブラリーが乏しい(村上春樹さんの「Sydney!」の方が上手だったように思う)。共感する場面や笑いをこらえきれない表現があるだけに、もう少し臨場感ある状況を伝えてほしかった。
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