著者 |
村上春樹 |
出版社 |
文藝春秋 |
出版年月 |
2001年1月 |
価格 |
\1,700 |
入手場所 |
学生生協 |
書評掲載 |
2001年2月 |
評 |
★★★★★ |
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著者は、言わずと知れた超売れっ子の小説家。 文春からは、同時期に「シドニーへ 彼女たちの42.195km(ノンフィクション)」が出版されているが、二人の著者のオリンピックを見る視点は、全く別角度からである。 こちらは、シドニー滞在期間に、著者が観て感じたことを日記形式で綴った作品で、そのユニークな感覚には笑いをこらえきれない。
これら二冊の対比は、例えば注目の女子マラソンだけとってみると、「シドニーへ…」のような、選手側サイドに立った書き方の本を読んだ後は、なんとなく選手の悲哀を感じてしまうのだが、村上氏はあくまで“観戦者”として選手の姿を見ているため、オリンピックをとことん楽しんでいる(本人は退屈だと言っているが・・・)。 なるほど、同じ大会・同じ種目であっても、楽しみ方はいろいろあるものだと、改めて考えさせられるが、本書を読む前に、「シドニーへ…」を読んでおくと、この本がさらにおもしろく読めると思う(同時期にこれらを出版した文春としてはそれが狙いなのだろうか? 表紙のカバーも「シドニーへ…」は上方からの視点で、なんとなく印象が暗い蒼で、本書は下方から、シドニーの爽やかな青い空を見上げている構図というのがあまりに対照的)。
著者は選手のプロフィールをしっかり事前調査しているようで、女子マラソン以外にもオリンピック競技の魅力(と退屈さ)を十分に感じさせてくれる。 たとえば、女子に比べて注目度が低かった男子マラソンについても、犬伏選手の話題に大きくページを割いていたり、いわゆるマイナー競技についても多くの薀蓄が語られている。 そのため、オリンピックには陸上競技以外には興味の薄かった私には、それ以外の競技について書かれた話題の方が、新鮮さを感じ、よりおもしろ味があった。
また、競技以外にも、オーストラリアを縦横無尽に駆け回った奮闘ぶりや、その中から感じたオーストラリア人の民族性や、観光スポットなど、オーストラリアの魅力を教えてくれる一冊でもある。
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