将来を嘱望されている兄とたすきをつなぐことを夢見ていた蒼野颯(あおのそら)だったが、兄が不慮の事故で走れなくなってしまった。
弟の颯も全中の3,000m走で2位に入る力をつけていたものの、兄の事故以来、走ることから遠ざかってしまっていた。
そんな希望を失った颯の目に飛び込んできたのは、仲間のために必死でたすきをつなごうと懸命に走る箱根駅伝だった。
「あの舞台に立ちたい」
高校生ランナーならば誰もが一度は夢見る世界を目の前で体験したことで、颯はついに再び走ることを決意した。
しかも、颯の選んだチームは駅伝の名門大学だ。
厳しい選抜試験をくぐり抜け、雑用を余儀なくされる下働きからのスタートだったが、父と兄の願いである箱根駅伝出場に向けて練習に励んでゆく。
本書は、かつて少年誌で「マラソンマン」を手がけていた作者による作品であるだけに、登場人物のランニングフォームが実にきれいに描かれている点が秀逸だ。
しかも、先輩後輩の厳しい上下関係や、同僚との熱い友情を見ていると、これこそスポーツコミックの定番といえるストーリーとなっている。
強いて言えば、陸上競技の公式大会では既に使われていない「ゼッケン」という名称を多用するなど、作者の年齢を感じさせる、やや時代遅れの印象はあったものの、「マラソンマン」を知っている読者ならば、20年も前の記憶が蘇り、懐かしい思いに浸ってしまうことだろう。
参考書籍:井上正治によるマラソンコミック「マラソンマン」
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