著者 |
編集部 |
出版社 |
宝島社 |
出版年月 |
2007年12月 |
価格 |
\1,000 |
入手場所 |
ブックオフ |
書評掲載 |
2009年8月 |
評 |
★★☆☆☆ |
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高校駅伝や大学駅伝が長時間にわたってテレビ中継される駅伝競技は、陸上競技のなかでも群を抜いて人気が高い。 学校側もその人気の高さにあやかり、知名度を高めようと続々と駅伝強化を打ち出している。 近年はこれまで聞いたことがなかったような大学が、箱根駅伝出場を契機に、飛躍的に知名度が高まる。スポーツジャーナリストの生島淳は、箱根駅伝が大学の経営戦略に組み込まれてしまっていることを著書のなかで警鐘を鳴らしている。
その結果、これまで伝統校として知られていた学校だけでなく、新興校が台頭したことによって、長距離種目の底辺は確実に底上げされている。学校間の競争は、まさに「群雄割拠」なのだ。 もちろん、そのおかげで駅伝競技を土台にして有力選手が生まれていることも事実だ。たとえば、佐久長聖高校時代から大器として期待された上野裕一郎や、佐藤悠基は、社会人となった今でも日本トップクラスでしのぎを削り、上野は2009年ベルリン世界選手権の日本代表にも選ばれている。 本書では、近年目覚ましい実績を残している佐久長聖高校をはじめ、全国高校駅伝や箱根駅伝の常連校の代表的なトレーニングを紹介しながら、指導者の理念などを学校ごとにまとめている。
本書の特徴は、写真が豊富で、ポイントを絞ったまとめ書きがわかりやすく、すらすら読んでゆける点にある。だが、わかりやすいがゆえに、記述が簡便すぎて、お世辞にも実用的とは言い難い。 たとえば、報徳学園高校の代表的なトレーニングとして、1週間のメニューが記載されているが、「月曜 朝練+ジョグ」「火曜 朝練+クロカン走」「水曜 朝練+スピード走」・・・などでは、具体的なトレーニング内容を知りたい読者にとっては、かなり物足りないだろう。
それだけではない。 本書は執筆者が誰か分からず、どんな知識を持っている方が取材しているのか不安になる。陸上競技の世界では当たり前の知識が、さもこの学校特有の特筆すべきトレーニングのように記載されていると、首をかしげたくなる。 また、「トレーニング教書」としてだけではなく、「読み物」としての価値も低い。それは、あまりに誤植が多すぎるのだ。 今井正人(現:トヨタ自動車九州)が「立原町高校 (正しくは「原町高校」)」出身だったり、鯉川なつえ(現:順天堂大学陸上競技部女子監督)の母校が、「筑波女子学園 (正しくは「筑紫女学園」)」などのありえない経歴を載せられては、知名度の高いはずの「名門校」の名前が貶められてしまいそうだ。
(今井正人の出身校の誤植は、おそらくインターネットからコピー&ペーストした時のミスではないだろうか。たとえば、「福島県立原町高校」などと紹介されているページを見て、区切り箇所を勘違いしたとか・・・。もしそうだとすると、知識もモラルも欠落した出版物と思わざるを得ない・・・)
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