著者 |
小林寛道 |
出版社 |
大修館書店 |
出版年月 |
1990年7月 |
価格 |
\2,270 |
入手場所 |
学生生協 |
書評掲載 |
2010年8月 |
評 |
★★★★☆ |
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本書は、「スポーツ科学ライブラリ」シリーズの第3巻目にあたる書籍。
「スポーツ科学ライブラリ」とは、スポーツにおける走・跳・投などの基本的運動に焦点を絞り、現在までの科学的研究の到達点を明らかにするとともに、これからの研究の視点及び領域を示したシリーズで、東京大学教授・宮下充正氏の監修のもと、各領域の第一人者が執筆を担当している。
「走る科学」というストレートなタイトルの通り、古今東西の膨大な文献を整理し、「走る」動作に関する科学的考察を、わずか250ページ程度のコンパクトB6サイズにまとめている。
このサイズは非常に持ち運びが容易で、学生時代は座右の書として常にバッグに忍ばせながら、様々な場面で重宝したことがなつかしい。
また、比較的一般の読者を対象に書かれているため、専門的な内容の解説が分かりやすく、複雑な物理的な話題に関しても、理解しやすい内容だ。
そうかと言って、決して浅い内容などではなく、「走る」ことの歴史的起源から始まり、エネルギー効率などの生理的分野、空気抵抗などの力学的分野、そして「走る」ことによって生じやすい故障対処法に至るまで、まさに「走る」動作を横断的に科学している書籍で、その当時までは、ありそうでなかった作品だ。
ただ、出版年次が古く、今読み返すと、新たな知見に欠け、サンプルとして掲載している世界記録なども、ひと昔前のものだ。
それは裏を返せば、当時の「常識」を整理する格好の書籍なのだが、今後の陸上競技界の発展のため、最新理論と今後の対策をまとめた続編が出てくれることを願わずにはいられない。
※ 長距離走に限れば、最新の科学的見地を実際に試している「ランニングの科学(2009年6月刊行)」もオススメです。
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