著者 |
桂望実 |
出版社 |
文藝春秋 |
出版年月 |
2006年11月 |
価格 |
\1,429(税別) |
入手場所 |
東京駅
BOOK GARDEN |
書評掲載 |
2006年12月 |
評 |
★★★☆☆ |
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僕の目標かい? 当然オリンピックの金メダルだよ。だって、優勝以外に走る価値なんてないからね。まぁ、箱根駅伝ぐらいは走っておいた方がいいかな。注目を集められるし、それが父の願いでもあるようだからね。 え、仲間ってなに? 信じるべきは自分だけだから、仲間なんか要らない。だって僕は天賦の才能を授かっているんだし、三流選手と一緒に練習しても目が曇るだけ。 それよりも、どうして君たちはそんなに苦しそうに走るのかな? すっげぇ不思議。
やっぱり、生来のDNAに抗うことは、時間の無駄なんだよね。
傲慢にもみえる、自信に満ち溢れた天才ランナー・岡崎優。でももし、その才能が、天から授かったものではなく、人為的に作り出されたものだったら・・・。
中学・高校時代から桁違いの走りで他を圧倒し、将来を嘱望されていた優が、大学入学後のロードレースで初めて経験する苦悶の走り。 明かにいつもとは違う走りに戸惑いながら、辛くも優勝するも、自らの身体の異変に気付き始めていた優が耳にした衝撃の言葉・・・。
医学の発展によって、いずれ現実になるかもしれないトピックを扱い、テーマとしては目の付け所がおもしろい。 しかし、読後感としては、イマイチ物足りない印象が残ってしまった。 その理由として、競技に関する専門的な内容のみならず、家族のつながりや、問題を発生させるに至った原因や動機、更には仲間に心を開いていく経緯などについて、サラリと触れただけで、多くを語らせなかった点にあるように感じる。 そのため、後半の展開に期待していたにも関わらず、クライマックスがどこにあったのか分からないままに読み終えてしまい、いささか拍子抜けしてしまった。 陸上競技としてはリアリティある面白いテーマなだけに、もう少し煮詰めてほしかったと、ちょっぴり残念です。
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