著者 |
歌野晶午 |
出版社 |
原書房 |
出版年月 |
2004年2月 |
価格 |
\1,600 |
入手場所 |
書泉グランデ |
書評掲載 |
2004年3月 |
評 |
★★☆☆☆ |
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ある長距離クラブチームの監督と選手を巡る確執から生じた殺人劇を描いたミステリー。
タイトルにもなっている「七年間」というのが、この小説のキーワードになるのだが、著者の仕掛けたトリックに騙され、時間的な錯覚を起こし、しばしば頭が混乱しながら読み進めてしまう。 そして最後にこの時間的な謎が解かれるのだが、トリックが常識外れのエピソードを用いているために、ちょっと興醒めしてしまう。
また、この時間的トリックに著者自身も混乱してしまったのか、ストーリーに大きな矛盾が生じている。 読者を混乱させるために、様々な不可思議なエピソードが散りばめられているが、読後に釈然とできない点に違和感を覚え、時系列的に事件を整理していくと、ストーリーが成立し得ない、明らかな間違いがあることに気付いた。 その間違いに気付くには、1回読んだだけでは難しいかもしれない。それほどこのトリックには、読者を錯覚させるに足る、練られた工夫が施してある。 でもこのトリックが解決した上で、冷静になって読みなおしてみると、必ずおかしな点に気が付くだろう。 マラソンのスタートに「用意」を用いている、などという初歩的なミスには目を瞑っても、ストーリーの展開に大きな役割を果たすエピソードに致命的なミスを犯しては、作品自体の完成度は低いと言わざるを得ない。 血液ドーピングや、それ以上に非人道的な能力向上アプローチの試みに加え、P.ラドクリフ選手といった今をときめく選手がでてくるなど、とてもタイムリーな話題を引用しているだけに、最後の詰めの甘さが残念。
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