著者 |
秋山正幸 |
出版社 |
図書新聞 |
出版年月 |
2011年10月 |
価格 |
\1,600(税別) |
入手場所 |
Amazon.com |
書評掲載 |
2012年1月 |
評 |
★★☆☆☆ |
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なんてことだ。こんなはずじゃないのに。
5区の山上り区間。チームのエースとして臨んだ最高の舞台で、周囲の期待を裏切ってしまうまさかの大ブレーキ。
誰もが予想していなかった結果にショックを受け、大きな心理的外傷を負ってしまった雄太は、陸上部を退部しようと決意を固めた。
だが、かつて同じく陸上競技で名選手として鳴らした祖父から説得され、最終学年となった最後の箱根駅伝でリベンジを果たそうと気持ちを切り替えることができた。
しかし箱根駅伝予選会では、古傷の再発を恐れてラストスパートをかけられず、その後の全日本大学駅伝においても、序盤で胸が苦しくなり、全身の筋肉がこわばってしまう。
まだ自分は不安神経症を克服できていないのだろうか?
箱根駅伝の本番で期待にこたえられる走りができるのだろうか?
大きな不安が残ったまま迎えた最後の箱根駅伝。6区の急坂を好調に下って行くのだが、中盤にまた胸の苦しさが襲ってきた・・・。
さて、著者が陸上競技経験者であるかについては略歴から判断できなかったものの、箱根駅伝についてはレース展開やコースのポイント、そして監督陣の思惑に至るまで、よく調べられていて共感できる部分が多い。
だが、小説としておもしろい作品だったかというと、残念ながら大きく首をかしげざるを得ない。
文章が復古調で、登場人物のセリフが非常に硬い。
舞台が戦前の箱根駅伝であれば時代背景に合っている部分もあるのだが、本書の舞台は近年であり、そのギャップが大きな壁となり、感情移入が阻まれてしまう。
また、ストーリーが単調で、いわば「直球一本勝負」。変化球が一切ないため、安心して読むことができる一方で、感情を揺り動かさせる場面には一切遭遇しなかった。
果たして、本書のクライマックスはどこだったのだろうか?
誰かの日記か回顧録ではなかったのだろうかと思えるほど淡々とした作品で、小説としてはもう少しひねりを加えたストーリーがほしかった。
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