著者 |
安東能明 |
出版社 |
新潮社 |
出版年月 |
2003年10月 |
価格 |
\1,900 |
入手場所 |
bk1 |
書評掲載 |
2003年12月 |
評 |
★★★★☆ |
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箱根駅伝の優勝候補である神奈川大学の女子マネジャーが、大会直前に行方をくらませた。それをきっかけに事件は予想しえない方向へ発展していく。
正月の2日間に渡って、毎年高視聴率を誇る箱根駅伝が、クレバーな犯人によって電波ジャックされた。 犯人は、ある選手を駅伝に出場させるなと要求してきた。狙われたのは、誘拐されたマネジャーの恋人でもあり、最終学年にして初めて正選手の座を手にした無名の選手だった。 なぜ彼が標的になったのか。動機はなんなのか。そして犯人の目的はどこにあるのか。 偶然狙われたと思われた誘拐事件は、巧妙な犯行のプロローグに過ぎなかった。 被害者となった選手たち、駅伝中継を強行する報道陣、被害者救出を最優先とする警察、そして犯人との息詰まる駆け引き。混迷を極めるなか、スタートの号砲が無情に鳴り響く。
表現力が豊かで、箱根駅伝を題材としているだけあって、選手や監督陣の緊張感に共感する場面が多い。 駅伝報道におけるTVクルーの奮闘や、情報通信に関する専門的内容に関しても、深く調べていて驚かされる。 しかし残念なのは、事件の点が線につながるまでは、胸を高鳴らせて一気に読み進めてしまったのに対して、ラストはあっけなく、とても白々しいまとめ方に感じたこと。そう、まるで著者は、終盤にきて力尽きたオーバーペースの駅伝選手のように、ラストを彩るアイデアを出し尽くせなかったのようだ。 あと一歩がんばって、エピローグを追加してくれれば読んだ後の余韻が全然違ったものになったのではと思うと、よく練られた作品なだけに非常に歯がゆさを感じる。
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