著者 |
鳥飼否宇 |
出版社 |
小学館 |
出版年月 |
2005年12月 |
価格 |
\1,400 |
入手場所 |
市立図書館 |
書評掲載 |
2006年5月 |
評 |
★★★☆☆ |
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舞台は、2007年・第61回福岡国際マラソン。 北京オリンピックとパラリンピックを翌年に控えた代表選考会として、有力選手が集まるレースである。
各々の選手が、それぞれの願いや希望を胸に秘め、様々な想いを交錯させながらレースに挑む姿を、詳細に描写しながら進んでゆく。 テレビを通して見ると、淡々とゴールを目指しているだけのように見えるが、その間には選手たちや、彼らを取り巻く関係者の様々な感情が揺れ動いている。
本書は、そんな周囲の関係者を含めた、いびつな人間関係をひとつのマラソン大会を舞台に反映させ、嫉妬や憎しみ、顕示欲やコンプレックスといった憎悪がうごめく関係を、見事に42.195kmのなかで完結させている。 ジャンルとしては、軽めのミステリー小説をいった分類になるかもしれないけれど、マラソンランナーならば共感できる部分が多く、そうでなくても、一般に「マラソン」と聞いて、何らかのイメージを抱くことができるファンならば、「スー」っと入っていける作品だと思う。
様々な謎めいた点が線につながる場面では、「なるほど、そうきたか!」と、伏線の張り方に感嘆を覚えるが、いかんせんそれがマラソン小説の定めなのか、中盤は単調で起伏がなく、先の展開がある程度読めてしまう。 たとえば給水の場面で、「(あ、コケるかな)」と予想していると、やっぱり転倒してくれる。 同じフレーズが無意味に繰り返される不愉快な記述も多く、そもそも人間関係の設定にムリがあるように感じてしまうが、謎解きのアイデアはよく練られている。 マラソン小説というより、一冊のミステリー小説として評価すれば、可も無く不可も無く、といったところでしょうか。
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