著者 |
著:パトリシア・ネル・ウォーレン
訳:北丸雄二 |
出版社 |
第三書館 |
出版年月 |
1990年10月 |
価格 |
\1,800 |
入手場所 |
ブックオフ |
書評掲載 |
2001年6月 |
評 |
★★★☆☆ |
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陸上界を舞台に繰り広げられる、同性愛者にスポットを当てた小説。 ふと古本屋で見つけ、ぱらぱらと内容を読んでみて、純粋な陸上小説のようだと手にとって見たが、主たるテーマは「同性愛」である。 ちょっとだまされたかな、と思いつつ読み進めていったが、同性愛についての社会学的な観察だけでなく、陸上長距離に関する知識も非常に豊富で、雑誌「ランナーズ・ワールド」の話題や、CBSテレビなど、アメリカでは有名なメディアが実名で登場したり、「歴代2位の記録」などという記述を読んでいると、これは実際にあった話を元にしたのではないかと勘繰りたくなるぐらいに真剣に書かれている。
内容は、同性愛が発覚し、大学を追われた中・長距離の3選手が、かねてから同性愛者であるとうわさされていたコーチのいる大学に移籍するところから始まる。3人は現役の超一流ランナーで、コーチもオリンピックまであと一歩だった有名選手。 彼らと、その周りの仲間が、世間の同性愛に対する偏見や、レース出場拒否といったあからさまな妨害工作などと戦いながら、オリンピック出場、そして金メダルと、同性愛の世間的地位を勝ち取っていく様子を描いている。 あとがきにある訳者の言葉を借りれば、これは「パロディにもジョークにもなりそうもない真摯な人間達の戦い」であると言っても言い過ぎではない。
1974年にアメリカで出版され、ベストセラーになったようであるが、400ページ弱にもわたる長編小説で、難解な漢字も多く(これは訳者の責任だが)、とっつきにくい内容であるだけに、読む時にはそれなりの覚悟が必要。 それにタイトルと内容には深い関連がなく、期待してクライマックスを迎えたが、あっさり終わってしまった。 私だったら、ラストはこう結びたい。 『彼は常に先頭を走りつづけていた。そして、社会的にも同性愛に対する偏見や差別を打ち破る先駆者だった。そう、いつでも彼はフロント・ランナーでありつづけた』とかね。
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