著者 |
比嘉正樹 |
出版社 |
文芸社 |
出版年月 |
2007年6月 |
価格 |
\1,400(税別) |
入手場所 |
楽天ブックス |
書評掲載 |
2010年8月 |
評 |
★★☆☆☆ |
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著者の名前を目にした時、ひとりのランナーの顔が思い浮かんだ。
実業団の資生堂でマラソンランナーとして活躍した選手が、たしか著者と同じ名前だった。そんなことを考えながら、巻末の著者略歴をのぞいてみると、やはりまぎれもなく同じ人物だった。
あの彫の深い表情で颯爽と駆け抜けていた姿は、いまだに私の記憶から離れていない。
かつて国内トップクラスで活躍していた選手が、市議会議員を経て、現在は早大大学院でスポーツ政策を研究しているそうだ。
どんな経緯があったかは分からないが、かつて一流ランナーだった著者による、マラソンをテーマにした小説とあって、期待に胸を膨らませて手にしてみた。しかし、現実離れしたストーリーに、少年漫画のような特殊能力が白々しく、高揚感を一切感じることなく読み終わってしまった。
ストーリーは、かつて箱根駅伝を走ったことがある諜報員・反田京介が、予知能力を駆使して、東京オリンピックを舞台にしたある事件を解決させるというのだが、特に元・箱根駅伝ランナーであったことがストーリーに強く絡んでくるわけではない。ましてや、現役を退いてしばらく経つ主人公が、オリンピックのマラソンでペースメーカーを務めるなどというのは、無理やり感が否めない。
ジャンルとしては、SFやスパイものが該当するのだろうが、テーマが絞り切れておらず、風景や人物描写も乏しい。
子供たちに人気の戦隊もののような突拍子もないアイディアが本書の肝だが、大人が読んで楽しめる内容ではなさそうだ。
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