著者 |
吉田直樹 |
出版社 |
NHK出版 |
出版年月 |
2001年9月 |
価格 |
\1,800 |
入手場所 |
bk1 |
書評掲載 |
2003年4月 |
評 |
★★★★★ |
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女子マラソン界を舞台にした殺人事件を、青年監督が解き明かしていく長編サスペンス。 実業団チームに所属する自社の選手が、練習中に突然死を遂げたことから物語は始まり、かつてトップランナーとして名を馳せた青年は、運命に弄ばれるように事件に巻き込まれていく。 彼女はなぜその場所で、その時間に死ななければならなかったのか。偶然にしてはあまりに不可解な事故に対し、敢然と立ち向かっていく主人公。 ひとつの疑問を解き明かすたびにもう一つの謎が生まれながら、そして、謎を解き明かそうとする彼を邪魔する者たちに阻まれながらも、真実を追い求めて奔走していく。 そしてたどり着いた真実とは、恐ろしいまでに巧妙に仕組まれた巨大な陰謀だった・・・
ひとつのサスペンス小説としても十分おもしろいが、それだけではなく、走ることについてや、医学的な話題が非常に深く調べられていて、読み応えがある。 「東京国際女子マラソン」や、「高橋尚子選手」といった実名もたびたび登場し、事件をめぐるキーワードの一つである「大阪オリンピック」の話題も、リアリティあるストーリー設定に花を添えている。 登場人物が多く、事件を解き明かす鍵が線につながるまで、やや戸惑うことが多いが、クライマックスは読んでいるこちらが息もつけないくらいに緊迫したなかで、見事な推理劇を見せてくれる。
巨大な組織にひとりで立ち向かおうとするドンキホーテのようなストーリー設定には、やや無理を感じなくもない。 また、主人公をはじめ、登場人物の個性が弱く、活字にされた名前を読むだけでどんな人物だったか思い浮かべづらかったことが気になったが、ストーリーの展開が上手で、内容もよく練られた作品だと思います。
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