著者 |
倉阪鬼一郎 |
出版社 |
光文社・
カッパノベルス |
出版年月 |
2004年7月 |
価格 |
\900 |
入手場所 |
bk1 |
書評掲載 |
2007年2月 |
評 |
★★★☆☆ |
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これまで目立った成績のない無名ランナーの息子が、突然誘拐された。 犯人の要求は、都内で開催予定の歴史ある国際マラソンで、2時間12分を切れ、という奇妙なものだった。 しかしそれは、犯人が描く壮大なストーリーの、ほんの序章に過ぎなかった。
家族の絆と裏切り、同族会社の派閥争い、そして事件解決を最優先にする警察と、あと一歩でオリンピックに手が届かんとするチームコーチとの狭間に立たされた選手。 複雑な人間関係が入り混じるなかで、それをあざ笑うかのように奇妙な指示がレース中に届けられる・・・
フルマラソンを舞台にした推理小説とあって、ランナーが距離を進めるにつれて、様々なトリックが仕掛けられていて、なかなか推理のしがいがある。 とことどころに設けられた「給水ポイント」でのヒントも、趣向が凝らされていて、フッと一息つくにはちょうどいい。
しかし、肝心のクライマックスでは、関係者のこれまでの不可解な言動を氷解させるだけの納得いく推理に至っておらず、読後感としてはちょっとスッキリしない感覚が残ってしまった。 加えて、あえてマラソンという競技を舞台に演じさせているにも関わらず、彼らの息遣いや終盤の苦しみ、そして選手との駆け引きなどを絡めることもなく、推理小説ならではのドキドキ、ゾクゾクする感覚すら味わえず、淡々と読み終えてしまったのが残念。
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