著者 |
武田薫 |
出版社 |
ランナーズ |
出版年月 |
1993年10月 |
価格 |
\1,500 |
入手場所 |
書泉グランデ |
書評掲載 |
2003年6月 |
評 |
★★★★☆ |
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サブタイトルから想像できるように、マラソンランナーとそのコーチらを主人公にしたノンフィクションだが、ここに登場するコーチたちは、決して名監督や・名指導者として名前が知られている者たちばかりではない。
多くの読者は、あの松野明美選手を育てた指導者と聞かれれば、まっさきに岡田正裕監督を思い浮かべるだろうし、瀬古利彦選手のコーチは、中村清監督だという回答に対して、おそらく異論はないだろう。
しかし、著者はこの本の中では、彼らのような名の知れた指導者ではなく、いわゆる市井の徒に的を絞っている。 著者があとがきで「(選手たちの)レベルアップのポイントに立ち会った人」と表現している彼らは、無名の県立高校の教師であったり、民間企業のサラリーマンであったりと、ごくどこにでも存在する肩書きを持っている。 ただ特別だったのは、走ることが大好きで、選手に対して愛情と情熱を持って接していたことだろう。
19人の登場人物の中では、私はやはり同郷の牧野義夫さん(富士通長野時代の中山竹通選手のコーチ)の話題が最も印象深い。 青東駅伝では長野県チームの監督経験もあり、私も何度かお世話になったことがある、身近な人でもあるが、弱音を見せることなど想像もできない中山選手の本当の姿を聞かせてもらったようで、いささか衝撃的でもあった。
一昔前の内容ではあるけれど、今では伝説になりつつある選手たちの、レースでは見ることのできない姿を見せてもらったようで、ちょっぴり身近に感じたりもしてしまう。 彼らは指導者というよりはむしろ、孤独なマラソンランナーが、心を許せる数少ない友人という意味での“パートナー”と呼んで然るべきなのかもしれない。
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