トップアスリート |
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国内のトップアスリート総勢35人が、種目を問わず活字となって甦った。 著者の小松成美さんと言えば、スポーツ専門誌「Number」で何度も目にした著名な作家で、後にカリスマミュージシャンとして知られる「YOSHIKI」を取り上げたノンフィクションがベストセラーともなったことも記憶に新しい。 巻末の紹介文によると、本書の初出はJAL機内誌「SKYWARD」に掲載された記事をまとめた単行本なのだそうだが、ひとりひとりのアスリートに深く取材がされていながらも、極めて安定した分量に収められている。 それはページ数にして8〜9ページ。字数に換算すると、6,000字前後となるのだが、このコンパクトな分量が、すきま時間に読むには最適なのだ。 そうかと言って、中身が薄いわけでは決してない。それどころか、取材対象者の本音があちこちに散りばめられていて、幾度となく同じ所を読み返してしまう。 また、本書の読みやすさのポイントとして、全編が共通したシンプルな構成となっていることが挙げられるかもしれない。 それは、まず取材対象者の少年期からはじまり、特定の競技に夢中になった転機を探り、「トップアスリート」と呼ばれるまでに至った成長期を、時系列的に追いながら、飽くなき挑戦を続けるアスリートのチャレンジングスピリットを浮き彫りにしている点だ。 彼らは決して天性の能力にうぬぼれることなく、それを最大限に生かそうと模索し、言い知れぬ「不安」とも戦いながら、厳しいトレーニングをいとわない。 そしてなによりも、本書を読んで気付かされるのが、周囲の何気ないアドバイスや、出会いのすばらしさだ。 これまでの常識を覆す走法で世界を相手にする末續慎吾は、高野進コーチと出会わなければ、高校時代の暴れ馬のままだったかもしれない。バスケットボールに打ち込んでいた土佐礼子が、竹本英利に声をかけられなければ、世界選手権女子マラソンでの2回のメダルはなかったかもしれない。 歴史に「もし」はありえないが、まるで偶然にも思えてしまう運命的な一言や出会い、そしてここまでに至る気の遠くなるような時間が凝縮された本書は、オビにあるように、まさに中・高校生にとって人生の道しるべになる教科書のようだ。 もちろん、その感情は我々読者だけが感じたことではない。 著者は本書のはしがきで、「私こそ、彼らに生きる勇気を与えられている」と、本書が「未来を照らす光」となることを確信している。 本書を読んでいると、それが決して大げさな文句ではないことが伝わってくるような、アスリートの強い意志を感じずにはいられません。 ※ 陸上競技関係では、為末大、野口みずき、室伏広治、末續慎吾、土佐礼子、福士加代子のオリンピックアスリートと、パラリンピックアスリートの鈴木徹が登場。 |