オリンピアン、108年目の夏 |
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第1回近代オリンピック以来「108年目の夏」に開催されたアテネで、東京大会に並ぶ史上最多の金メダルを獲得する大活躍を見せた日本選手たち。彼らはどんな想いでアテネの夏に挑もうとしていたのだろう。本書はそんな疑問の答えを探っていくかのように、著者自身によるインタビューを中心に構成された短編集。 「日本選手の歩んできたオリンピックの歴史」、そして「お家芸の復活」から「新たな伝統の幕開け」といったテーマを柱に、「それぞれの選手たちの挑戦」を肉付けしていくかのように、4年に一度の特別な舞台に臨もうとする選手たちの心理状態を、言葉だけではなく、細かな表情や行動からも読み取ろうとしている。 より深く、鋭く探ろうとする著者に対して、当時の心境を思い出し、それを必死で言葉に換えようとしていく選手との応酬は、わずかな空間を境にして繰り広げられている、スポーツのごとき真剣勝負そのものだ。 ただ、9競技・22名の選手に取材対象が限られている本書の構成が、とても中途半端に感じる。3年前に、シドニー五輪女子マラソンをテーマに出版された「シドニーへ−彼女たちの42.195km」では、それぞれの選手や関係者への細かな取材を通して、熾烈な代表選考の過程をひとつのストーリーに作り上げていたけれど、本書ではコマ切れの取材がバラバラになり、なにか物足りない印象だけがあとに残ってしまった。 唯一読み応えがあったのは、これもやはり女子マラソンをテーマにした最終章「マラトンを駆ける」だったのは、決して私がマラソンものびいきという理由だけではなく、ようやくストーリーのある内容になっていたからだろう。 また、開幕前の事前インタビューが中心となっているため、注目(されていた)選手しか扱われていない点も、意外性がなく、おもしろ味がない。たとえば、ロス五輪(1984)以来20年振りにメダルを獲得した、アーチェリーの山本博選手などを取材していれば、貴重な内容として食い入るように読んでいたかもしれない。 陸上競技関係では、女子マラソン代表3選手に加え、高橋尚子選手、弘山晴美選手、室伏広治選手、末續慎吾選手、為末大選手が登場。 |