著者 |
芦田富雄 |
出版社 |
日本経済新聞社 |
出版年月 |
2003年 |
価格 |
\1,400 |
入手場所 |
平安堂書店 |
書評掲載 |
2004年7月 |
評 |
★★★★☆ |
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日経新聞夕刊に連載された企画「人間発見」から、スポーツ編のみを抜粋し、25人のアスリートへの取材をまとめた一冊。
種目は違えど、それぞれの舞台で世界へ挑んでいった彼らが、どんな思いで競技に取り組み、何を得ようとして、また何を伝えようとしているのか。そして彼らをそこまで駆り立てようとするものはなんなのか。 彼らの育った環境から、飛躍のきっかけとなった出来事、そして引退を決意した瞬間。 そんなトップアスリートとしての彼らの転機を探りながら、強靭な精神力をもつ彼らの哲学をも、この本は教えてくれる。
母国からの反対を押し切って、憧れの選手の許で学びたいと、日本に帰化した宇津木麗華選手(ソフトボール)や、世界の頂点に手が届く寸前で引退した伊達公子選手(テニス)をはじめ、ここに登場する選手の全てに共感と尊敬を覚え、そして多くの教訓を教えてもらった気がする。 大野豊選手(野球・元広島投手)の言葉、「努力の階段を二段、三段飛ばしで育った選手は、追いこまれたときに弱さを見せてしまう 」という数行からは、挫折を乗り越え、努力の末に夢をかなえた者が、天才にも勝ることを教えてくれる。
しかしその中でも際立って強烈なインパクトを与えてくれたのは、これまでに何度も読んできたはずの、中山竹通選手の記事だった。 わずか数ページの話のなかであっても、中山選手の強烈なプロ意識と、自ら切り拓いてきた貪欲な生き方は、他のどの選手よりも中身が濃いものだった。
新聞の連載記事をまとめた内容であるため、取材日が古い記事もあり、若干新鮮さに欠ける点が残念だが、とてもうまく話がまとめられていて、著者自身の“記者としてのプロ意識”も感じることができる。 陸上競技関係では、中山選手の他に、室伏広治選手、高橋尚子選手、有森裕子選手が登場します。
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