駆け引き
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シドニーオリンピック女子マラソンで優勝争いを演じた、高橋尚子選手とリディア・シモン選手に焦点を当て、金と銀のメダルの色を分けた原因を探っているノンフィクション。 マラソンの心理的要素をクローズアップしているのかと思われるタイトルがつけられているが、内容は高橋選手とシモン選手の対照的な練習や性格に焦点を当て、マラソンの難しさ、オリンピックで勝つことの難しさ、そして“金”メダルとはなんなのかを問いかけてくれているようだ。 往年の名ランナーであるフランク・ショーターやイングリッド・クリスチャンセン選手の話題なども登場し、オリンピックという特別なレースで、勝利の女神は気まぐれであることを教えてくれる。 久々の陸上関係の新刊とあって購入してはみたが、もはや語り尽くされた舞台での話なのであまり期待していなかった。だが2人の勝負に視点を当てるという、今まで無かったテーマであることに加えて、著者の文章が上手で、当時の情景が思い出され、いつの間にか引き込まれてしまう。 ただ、オビにある「サングラスを投げていなかったら・・・」は言い過ぎだろう。わずかな動作を引き合いに出し、マラソンという壮大なスポーツが一瞬で勝敗を分けてしまうかの言い方は、競技の本質を見失っており、全く的外れだ。 全体的にも、タイトルから受ける印象と内容には、ややギャップがあるような気がします。 |