引退
−終わらない夢−

　スポーツ専門誌「Number」に連載された記事をまとめた短編集。
　選手の「現在（いま）」を追った作品は多いが、引退後の人生を取り上げた作品集というのは珍しい。
　70人の登場人物のほとんどは、私が生まれる前後の方々であることに加えて、あまりマスコミに登場する機会のない選手も多いので、うっかりプロフィールを見逃すと、どんな種目の選手だったのかすら見当がつかないまま読み進めてしまうはめになる。
　しかしその頼りのプロフィールは、あまりに簡潔すぎるように感じた。年配の方には、「ああ、あの選手か」と、すぐにピンとくる選手もあるのだろうが、20代前後の読者を対象年齢に入れて書いてほしかった(なかには、何を専門にしていたかも書いてない選手も少なくない)。
　
　改善を要求したい点はあれど、内容については、なかなかおもしろかった。
　引退後に、それまでやっていたスポーツに関わる仕事の道を選ぶ者もあれば、それまでとは全くかかわりのない道を選択する者もいて、第二の人生の選択から、その人の本当にやりたかったことが何であったのかが垣間見れる気がする。
　陸上関係では、中山竹通・森下広一・松野明美・小鴨由水選手と、なぜか（と言うべきか、やはりと言うべきか）マラソン選手ばかりであった。

　値段が高い点は残念。
　書き下ろしならばまだしも、雑誌の連載記事をまとめただけで、この値段は高い気がする。