著者 |
佐瀬稔 |
出版社 |
世界文化社 |
出版年月 |
1996年8月 |
価格 |
\1,600 |
入手場所 |
ブックオフ |
書評掲載 |
2003年1月 |
評 |
★★★★★ |
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オリンピックに賭けた選手やコーチを巡るノンフィクション。こんなことを書くと、ありがちな青春ドラマのように聞こえてしまうが、この本はそんなきれいごとだけではない、様々な欲望を含めた泥臭いオリンピックの真実さえも伝えている。
著者は、ローマ、東京、・・・、ソウル、バルセロナと、近代オリンピックの歴史を新聞記者、そしてフリーライターとして感動を伝えてきた目撃者のひとりだが、著者がこの本を出版した当時に還暦を越えているということに驚かされる。 駆け出しの新米記者時代から現在にいたるオリンピックの変遷や報道技術の進歩に至るまで、近代オリンピックが歩んできた歴史を垣間見ることもできる。
生涯をジャーナリストとして捧げただけあって、文章が上手で、何度か読んだが全く飽きることがなく、むしろ読むたびに巧みな文章表現にうならされてしまう。 よく読むと、決して深い取材をしているわけではないことが分かる(噂をそのまま引用している場面も多い)が、それを補って余りある文章力に惹かれ、心を動かされる。 なかでも、陸上・十種競技のデーリー・トンプソン選手を扱った章では、まるで著者はこの競技に青春を注いだことがあるかのようなリアリティあるドラマを伝えてくれる。 これぞプロの筆というべきものか。陸上競技選手はもちろん、文学愛好者にはぜひ手にしてもらいたい一冊です。
陸上関係では、中山竹通、森下広一、宗兄弟、瀬古利彦、有森裕子らマラソン選手の他に、ベン・ジョンソン、カール・ルイス、ボブ・ヘイズらにスポットを当てた話題があります。 その他、“鬼”と呼ばれた大松博文(女子バレーボール)、ナディア・コマネチ(体操)、シュテフィ・グラフ(テニス)など、スポーツファンには興味をそそる話題満載です。
残念なのは、外国選手の呼び名が統一されていない点。同一人物なのに、あたかも新しい登場人物が出てきたのかと勘違いさせられてしまう。
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