著者 |
朝日新聞
be編集部 |
出版社 |
明治書院 |
出版年月 |
2006年5月 |
価格 |
\1,000(税別) |
入手場所 |
市立図書館 |
書評掲載 |
2010年9月 |
評 |
★★★☆☆ |
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「どんな人にも、人生に一つや二つの失敗や挫折は必ずあります。成功して、一見、幸せそうにみえる人でも、実は多くの失敗や挫折を重ねていたなんてことは、決してめずらしいことではありません。大切なのは、大きな困難に直面し、挫折を味わったとき、それをどう乗り越えていくかではないでしょうか。 」
これは、本書のあとがきに記されている「be編集部」の副編集長による言葉だ。
わずか数行ではあるが、本書のテーマはここに凝縮されている。
「be」とは、朝日新聞の土曜別刷り版のタイトルであり、本書は、2004年4月から連載された20本の記事を集めた単行本だ。
上述のあとがきによると、本連載にあたってテーマを議論したときに浮かび上がったキーワードが、「失敗学」という言葉だったという。
スポーツや芸能、文化など各分野の第一線で活躍している人たちが、どんな苦難や失敗を経験し、それをどう克服してきたのか。
そこには、マスコミを通じて知らされる、「成功者」としてのイメージとは全く対照的な一面が隠されている。
シドニー五輪で優勝し、連覇も期待されていた高橋尚子は、アテネ五輪代表から漏れ、失意の底にいた。
その後も決して順風は吹いてくれないのだが、彼女は自らの意志で重大な決断を下す。
それは、これまで自分を育ててくれた恩師・小出義雄の庇護の下から離れることだった。
一方、かつての男子マラソン界のスーパースターもまた、出口の見えないトンネルのなかでもがいていた。
選手としては、数々の栄光をつかんできたものの、指導者に転じてからは全く結果が出せない瀬古利彦。そんな逆風のなかで瀬古は、駅伝から撤退しマラソンに専念させることを会社に直訴したという。
高橋はその後「チームQ」設立後に見事な復活優勝を遂げ、瀬古はアテネ五輪に教え子である国近友昭を送り込むことができた。
本書を読んでいると、つくづく人生は順風ばかりではないことを思い知らされる。
いや、むしろ逆風のほうが多いぐらいだろう。しかし、どれだけ強い逆風が吹きつけられても折れない心を、彼らは持っていた。
数々の著名人がどのように挫折を乗り越えていったのかを知ることは、逆風だらけの人生における道しるべになるようだ。
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