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箱根駅伝 名場面100選

箱根駅伝名場面100選
著者 編集部
出版社 ベースボール・
マガジン社
出版年月 2014年11月
価格 \1,435(税別)
入手場所 平安堂書店
書評掲載 2014年12月
★★★★☆

 箱根駅伝がやってくる。
 年末になると同大会を特集した書籍が相次いで出版され、やや食傷気味の箱根駅伝関連書籍のなかにあって、本書は出色の作品だ。
 その理由には、陸上競技専門月刊誌である「陸上競技マガジン」と、ランニング月刊誌である「クリール」を擁するベースボール・マガジン社が監修している点が大きいだろう。
 第一線で活躍する著名な執筆陣による読み応え抜群の記事に加え、これまでの取材を通して蓄積されている正確な記録や鮮やかな写真をふんだんに盛り込んでいるのだから、他社が追随できないのも無理はない。

 その冒頭を飾るのは、世界選手権にも出場し、現在はナイキ・オレゴンプロジェクトに参加しアメリカを拠点に活動している大迫傑(早大出)へのインタビューだ。
 最終年度に迎えた今年の箱根では区間5位に終わったものの、あくまで視線の先は世界で戦うことに向けられており、今後の活躍を願わずにはいられない。
 そのほかにも、5区で驚異的な走りで4年連続区間賞の偉業を成し遂げた柏原竜二や、日本選手権10,000mで4連覇中の佐藤悠基ら、将来を嘱望される一流選手へのインタビューを通じて、箱根駅伝が彼らの競技人生にどのような影響を与えてきたかを知ることができて興味深い。

 また、現役選手だけではなく、いまや世界で戦う選手を育てる立場となった往年の名ランナー・瀬古利彦や、科学的トレーニングを積極的に取り入れ、順天堂大の一時代を築いた沢木啓祐らのインタビュー記事は、わずか数ページではあるが重みのある一言ばかりだ。
 なかでも、特に個人的に興味をひかれたインタビューがひとつあった。
 それは、高校時代の中山竹通の恩師である大川賢明への取材だ。
 苦学生のイメージが強い中山の高校時代はいかなるものだったのか大変興味があったのだが、大川からは一言も中山に関する話題が出てこない。
 インタビューとしては全く目的を果たしておらず、ボツになってもおかしくないと思うのだが、何も語られないからこそ、一体どんな3年間だったのだろうかと好奇心が湧いてきてしまう、不思議な記事だった。

 ほかにも、三代直樹(順大出)と藤田敦史(駒大出)の対談や、駒大監督・大八木弘明から箱根に賭ける熱い思いが語られているなど、駅伝ファンならずともこの競技の魅力を伝えるに十分な作品で、これだけクオリティの高いフルカラー書籍がわずか1,500円程度なのだから良心的だ。
 ただ残念だったのは、箱根から世界に羽ばたいていったランナーとして、2012年のロンドン五輪マラソン6位入賞の中本健太郎(拓大出)や、1999年世界選手権マラソン銅メダリストの佐藤信之(中大出)らもぜひ登場させてほしかった。

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