著者 |
小出義雄 |
出版社 |
扶桑社 |
出版年月 |
2000年11月 |
価格 |
\1,300 |
入手場所 |
ブックオフ |
書評掲載 |
2001年2月 |
評 |
★★★☆☆ |
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シドニーオリンピック女子マラソンにおいて、日本陸上界悲願の金メダルを獲得した、Qちゃんこと高橋尚子選手。 そんな高橋選手のオリンピックに向けたトレーニングと、その胸中を、監督である著者の視点からつづったエッセイ。 内容は、故障欠場を余儀なくされたセビリア世界選手権からオリンピック優勝までの過程を綴った「オリンピック編」と、有森選手や鈴木選手など、数多くの名選手を育ててきた著者の指導哲学を、洗いざらい語っている「指導編」の二部構成となっている。 オリンピック代表に選ばれる前に、自宅を担保にしてまで借金して、ボルダーに一戸建てを購入してしまうなど、まさに人生をシドニーオリンピックの金メダル獲得のために注いだ監督の熱い情熱が窺えて、その豪快な生き方にうらやましさすら感じてしまう。
また第二部の「指導編」では、いままでの常識にとらわれた練習ではなく、豊富な知識と経験から導き出された『勘』とでも言うべき、独自の指導哲学が満載。 「あの選手に上手くいったのだから、この選手も・・・」といった、通り一辺倒な指導を否定し、十人十色の指導法を第一に考えている。 だからこそ監督は、60歳を超えた今でもその選手に会った指導法を模索し、実践し、そしてかけっこを心から楽しんでいるのだろう。 豪放に見えるその裏には常に選手のことを考えている繊細で計算された読みがある。
すでにいろいろなメディアを通じて、高橋選手や小出監督のことについては知られているが、高橋選手直筆の、監督に宛てた手紙や、高橋選手の日々の所感を書き留めた監督メモを掲載するなど、他の本とは異なる手法が凝らされていて、思わず感情移入しながら読んでしまう。
※ 現在は文庫化されています。
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