著者 |
灰谷健次郎 |
出版社 |
角川文庫 |
出版年月 |
1998年3月 |
価格 |
\440 |
入手場所 |
ブックオフ |
書評掲載 |
2003年9月 |
評 |
★★★☆☆ |
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小説家、児童文学作家として知られる著者が、50歳を前にして走ることの喜びを発見してしまう。
文明の発達を否定し、離島での自給自足の生活を送る著者が走る理由はただひとつ。勝ちたいということでも、記録を向上させたいでもなく、ただそれが人間の自然な欲求であると確信したからだった。 そんな著者も、ホノルルマラソンでは、走り始めたばかりの女性に抜かれる“屈辱”を感じ、毎年少しずつ記録が伸びる“喜び”を感じ、完走めざして頑張ってしまっている。 生命の躍動するエネルギーを取り戻すために走り始めた著者の、究極の自然観、そして機械化された文明に対して生命力が衰えていくことに対する警鐘を鳴らし、青少年に対する熱い教育論も展開していくこのエッセイは、文明の発達ばかりを優先させてしまう我々現代人に対して、自然回帰の精神を問うている。
群馬大学の山西哲郎先生らとの対談も掲載されていて、子供だけでなく、大学生教育のためにも、自然との関わりを教えることの大切さがわかりやすく伝わってくる。 がんばらなくてもいい、勝つことへのこだわりも一切捨て、自然の中に身を置くことで感性が育てられていく。 隔離されたスポーツ施設では体験できない、ランニングという新しい世界の発見。そんな走る喜びと教育効果を教えてくれる一冊です。
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