著者 |
佐藤四郎 |
出版社 |
幻冬舎ルネッサンス |
出版年月 |
2008年2月 |
価格 |
\1,300 |
入手場所 |
bk1 |
書評掲載 |
2008年10月 |
評 |
★★☆☆☆ |
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ここ数年、ランニングブームが熱を帯びている。 東京マラソンや長野マラソンといった、大規模な市民マラソン大会が広く知られるようになり、ちまたの健康ブームもそんな流れを後押ししてくれているのだろう。
本書の著者も、走り始めたきっかけは「メタボ解消」という単純なものだったが、徐々に走ることが楽しくなり、フルマラソンでは3時間16分で完走できるまでに記録を伸ばしていく。もともとは運動が苦手で、体を動かすことが少なかったというから、この記録はとても立派な成績だろう。 しかし、50歳を目前にして記録が停滞し始め、走る楽しさが失せかけていた頃に、これからはゆっくりでも長い距離を走ろうと考えを切り替え、決意したのが「ランニングで日本一周」という壮大な計画だった。 元・教員である著者が、生徒や同僚から温かい声援を受けながら、各地で出会う様々な人との触れ合いを楽しんでいる様子が描かれている。
とは言うものの、連日走り続けて、一気に日本一周するわけではなく、自宅からスタート地点まで移動し(多分、車とか電車?)、1日40km前後を、2〜5連日ほどかけて目的地を走り、また自宅へ戻るという繰り返しで、7年間かけて海岸沿いを走行し、結果として日本一周を走破するというもの。 だが、一旦自宅に戻って、リスタートすることについては文中で全く触れられておらず、その上、テーマが時系列に並んでいないため、著者の行動がいまいち捉えられない。 さらに残念なのは、本書では暑さや寒さ、そして予想外のハプニングに接した出来事を中心に多くのページを割いているが、その一方で、日本各地の名所を巡っているというのに、風景描写が乏しく、その地その地の見所や景観の様子が伝えきれずにいる。 したがって、日本一周という壮大な冒険の過酷さばかりが強調されてしまい、楽しんで走っている様子がほとんど見当たらない。
ランニング中には、スケッチブックを持参して、訪れた地をスケッチしていたというぐらいの芸術センスがあるのだから、ぜひそんなスケッチを挟んでくれれば、著者の見た日本がより読者に伝わったのではないかと思うが、せっかくの壮大な旅の魅力がスポイルされてしまっているようで口惜しい。
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