著者 |
小出義雄 |
出版社 |
幻冬舎 |
出版年月 |
2004年7月 |
価格 |
\1,300 |
入手場所 |
市立図書館 |
書評掲載 |
2004年8月 |
評 |
★★★☆☆ |
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日本の陸上競技界では前人未到の、オリンピック2連覇という夢に挑んだ、マラソンランナー高橋尚子選手と、その指導者でもある著者の小出義雄監督。 前回シドニー大会での輝かしい金メダル獲得から、今回のアテネ大会選考会に至るまでの道程を綴った、監督の手記となるこの作品は、基準が不透明な選考会の壁に阻まれ、夢の舞台に立つことを許されなくなったことに対する、怒りとやるせなさが交錯する辛らつな陸連批評が冒頭を埋めている。
小出監督の著書はこれまでに何冊も出版されているけれど、いずれも豪放磊落な性格が滲みでているような、悪く言うと
“かけっこが好きなだけの、夢のある子どものようなオッサン”を演じているような優しい印象だった。 一方この作品では、監督の溢れんばかりの喜怒哀楽の感情を、そのまましたためてしまったかのようで、まるで過激な写真週刊誌の記事かのような内容に、「ここまで書いちゃっていいのだろうか・・・」といささか衝撃を受ける。 悪意に解釈すれば、感情剥き出しともとれる汚い文章で、この期に及んで往生際の悪さを感じなくもない。だが選手のことを第一に考え、マラソンの普及と発展を、誰よりも願っているということは、痛いほどに伝わってくる。
だれもがバカにするような高い目標を公言し、それを見事に達成してしまう“小出マジック”に我々は驚かされっぱなしだが、夢と希望を明確にし、育てていくことの大切さを、この本は改めて教えてくれるようだ。 特に「・・・。たとえ、夢という霞を食べていたとしても、そこそこの人生に折り合いをつけて美味しいものを食べているより僕は楽しいと思うんです。・・・ (P174)」と続く後半の数行は、会社を辞めた現在の管理人にとって、背中を後押しされたような気がして、何度も何度も読み返してしまった。 「夢や希望は生きもののよう。成長もし、大きく膨らんでもいく。楽しく生きていかなきゃ人生じゃない。 」 呪文のように唱えていたい魔法の言葉「へこたれるもんかい」。元気が生まれる一言かもしれません。
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