魂のゆくえ・アースマラソン766Days |
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「地球を走って一周する」 にわかには信じられないような壮大な目標にチャレンジした人がいる。 お笑い芸人として長く活躍している間寛平が、そのチャレンジャーだ。 しかし、この人は本業だけでなく、ランナーとしての活躍ぶりも人並み外れている。 その戦績たるや、24時間テレビ恒例の「24時間マラソン」を始め、ギリシャの鉄人マラソン・スパルタスロン(245.3km)を3回も完走するなど、日本を代表するウルトラマラソンランナーといっても過言ではない人物だ。 本書は、「間寛平アースマラソン」と名付けられた、地球一周マラソンの出発からゴールまでに至る過酷な766日を、克明に記録した日記調の冒険記。 2008年12月17日に、大阪・なんばグランド花月をスタートした著者は、千葉県・鴨川港でヨットに乗船。セーリングのサポーターと二人で太平洋を渡り、北米大陸を目指していくのだが、飛行機を使わずにたった二人で小さなヨットで移動するところに、「自分の足と自然の力だけで」踏破したいという、このマラソンに込めた著者の思いが伝わってくるようだ。 険しいロッキー山脈や激しい天候に苦しめられたり、異文化が混とんとする世界に驚かされたりもしたアメリカ大陸。 コペンハーゲンでのIOC総会までに間に合いたいとペースを速めて到着するも、東京落選の悲報を聞き、後ろ髪を引かれる思いで去ったヨーロッパ。 いまだに民族の紛争が絶えず、命の危険も感じた中東。果てしなく続くゴビ砂漠を砂まみれで駆け抜けた中国。 規格外のスケールにはただただ驚かされるばかりで、世界地図を片手に、「(こんな国があったのか)」、「(いつか行ってみたい)」などと想像力を膨らませてくれる。 ところで、著者はこのマラソンの途中で前立腺がんであることを知り、治療と並行しながら偉業を成し遂げたという。 マラソンを断念してもおかしくないほどの病と闘いながら、なぜ著者は挑戦することができたのだろうか。 思いつきで始まったという軽いノリで本書はスタートしているが、初志貫徹しようとする著者の強い意志には感服するばかりだ。 だがその一方で、なぜあえてこれだけの無謀なチャレンジを志したのかというメッセージが弱いように感じたのが残念。 また、日記調の書籍としては、2年強もの歳月をバランス良くコンパクトにまとめたと思うが、18ヶ国も巡っているのだから、各国の写真や、国の紹介が挿んであれば、書籍としての完成度はもっと素晴らしいものになったのではないかと思う。 そんなことを思いながら、同時購入したもう一冊の関連書籍を読んでいると、スタートまでに至る経緯や、資金集めなどの周囲の大変さが伝わってくるようで、本書の魅力も更に深まった気がする。 さすがは商売上手な吉本なのかもしれないが、芸人の枠を超えた、この挑戦的な試みは、お茶の間を楽しませるおちゃらけた人物と同一とは思えないほどに真剣そのものだ。 関連書籍:「一歩60cmで地球を廻れ」 |