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わが駅伝人生にゴールなし

わが駅伝人生にゴールなし
著者
出版社 神奈川新聞社
出版年月 2023年3月
価格 1,500円
入手場所 楽天ブックス
書評掲載 2023年5月
★★★☆☆

 渋い人が出てきたな。
 本書の存在を、ふとネット書店で発見した際に感じてしまった第一印象だ。
 本書は、地元にゆかりのある著名人が語る、神奈川新聞の連載記事「わが人生」シリーズに、2022年9月1日より12月9日まで、実に69回に渡って掲載された記事を単行本化した作品。
 地元紙でなければ目にすることのない貴重な自伝が、インターネットで気軽に手に入ることはとても幸運だ。

 著者の横溝三郎といえば、箱根駅伝のテレビ放送で解説を務めていたことで知られているが、そういえば現役時代の活躍については、気に留めることもなかった。
 それだけに、著者が高校・大学では世代のトップを走り、当時日本の陸上競技界を牽引していたリッカーミシンへ入社後も、1964年東京オリンピック3,000m障害に出場するなど、日本の第一人者だった事実を、恥ずかしながら本書を読んで初めて教えてもらった。

 本書を読んでいると、著者が様々な関係者との出会いによって人生を歩んできたことが伝わってきて、まさにタイトルになっている「駅伝人生」のようだ。
 高校進学は経済的に無理(P22)な家庭環境ではあったが、地元陸上クラブの関根忠則の勧めで、特待生として横浜高校へ入学し、中長距離種目でインターハイ優勝を飾るや、ベルリンオリンピックでも活躍した憧れの村社講平から誘いを受け、名門・中央大学へ進学後は、インカレや駅伝で活躍し、箱根駅伝では同校の六連覇の礎を築いた。

 ドイツ留学後に出場した東京オリンピックでは、無念の予選落ちに終わり、現役生活にピリオドを打つものの、当時は同好会レベルだった松下通信工業から女子駅伝チームの育成を依頼され、同チームを強豪へと成長させた。
 前例のなかった外国人選手の獲得にも動き、中国の王華碧が大活躍したことは、日本国内での外国人ランナー増加の端緒ともなった(馬俊仁との出会いのエピソードも興味深い)。
 その後も、箱根駅伝テレビ放送黎明期の解説者を経て、なんと71歳で新興の東京国際大学駅伝チーム立上げに関わることになる。
 創部5年で箱根本選へ出場すると明言した理事長・倉田信靖の全面的なバックアップを得て、急成長した同校の活躍は、いまや広く知られるところだろう。
 貴重な写真や、当時の新聞記事を掲載するあたりは、さすが新聞社が手掛けた特集であり、傘寿(80歳)を迎えてもなお精力的にスカウト活動に東奔西走する生き生きした姿を見ると、まだまだ残りの人生を無駄にできやしない、と読者に対して「熱意」のタスキを託されたようだ。

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