著者 |
黒井克行 |
出版社 |
学習研究社 |
出版年月 |
2006年7月 |
価格 |
\1,200 |
入手場所 |
蔦屋書店 |
書評掲載 |
2006年7月 |
評 |
★★★☆☆ |
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まさかのアテネ五輪代表からの落選や、度重なる故障に悩まされ、一時は第一線からの引退もささやかれていた高橋尚子選手。
そんな彼女の半生を振り返り、昨秋(2005年)の東京国際女子マラソンでの復活優勝に至る過程や、今後のビジョンについても語っていて、話題性としてはまずまず新鮮な内容。
比較的やさしい書き方で、漢字にはルビが多く振られていることから、対象年齢は中・高校生ぐらいだろうかと推測される。 日本中に感動と勇気を与えた復活優勝以来、半年以上が経過しているこのタイミングで出版される理由はなんなのだろう、と思っていたけれど、なるほどそう考えると、夏休みを控えた中・高校生向けの書籍として絶好の内容かもしれない。
そのため、レース前の繊細な精神状態とか、過酷な超高地トレーニングなどの常人離れしたエピソードには、さらりと触れるだけで、大まかな彼女の生涯について大局的に眺めながら、何度となく訪れる試練を乗り越えてきた、彼女の精神的な強さを教えてくれる。
本書は、私なりには大きく「3つのステージ」に分けることができると思う。 それはまず、彼女の生い立ちから、将来の夢、陸上競技との出会いなどを通じて、彼女の強い意志を育むベースとなった幼少〜中学時代。 第二に、高校では中澤教諭、大学では山内監督といった指導者に恵まれ、小出監督のもとでついにその才能を開花させ、世界のトップに上り詰めるまで。 そして第三に、その後の不振や、小出監督からの独立と、「チームQ」を設立してから現在に至るまでである。
いずれのステージを思い返しても、決して順風満帆ではない彼女が、挫折を乗り越え、また新たなステージに挑戦しようとする姿は、読み手にとって「夢」を追い求めていくことが、どれだけ強いモチベーションを生み出すかについて、身をもって教えられた気がする。
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