著者 |
本郷陽二 |
出版社 |
汐文社 |
出版年月 |
2006年3月 |
価格 |
\1,500 |
入手場所 |
市立図書館 |
書評掲載 |
2006年7月 |
評 |
★★★☆☆ |
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「汐文社」と書いて、「ちょうぶんしゃ」と読むらしい。 いったいどんな出版物を扱っているのだろうと調べてみたところ、小学校の図書館で、(マンガであるがゆえに)絶大なる人気を誇った「はだしのゲン」をはじめとした児童書を中心に出版しているらしい(同社ホームページより)。 「スポーツのニューヒロイン」と題されたこのシリーズには、ゴルフの「宮里藍選手」、卓球の「福原愛選手」、バレーボールの「栗原恵・大山加奈選手」が既刊され、児童書であるがゆえに、文字が大きく、ルビも振られている(が、普通に読めない「汐文社」にはルビなし)。 個人的な感想としては、競技のメジャー性や、国際大会での実績やキャリアに加え、「女子マラソン」の社会的影響力を考慮すると、高橋選手をダントツにトップにもってくるべき! と思うのだが、本書が当シリーズの締めを飾る順になっている。
内容は、対象年齢が低いことから想像できるように、高橋選手の生い立ちから小出監督とマラソンとの出会い、オリンピックの優勝と世界記録の更新、そしてその間に訪れる数々の試練を乗り越えて成長していく、というこれまでに数多く取り沙汰されているエピソードが中心だが、世界トップレベルの選手で、これほど挫折を乗り越えてきた選手は、他の競技を見渡しても、数多くはいないだろう。
小学校でのライバルとの「漢字書き取り合戦」や、中学生時代の初恋など、読み手に親しみやすいエピソードを加えるなど、工夫が凝らされたつくりになっていて、好感が持てる。 しかし、対象年齢を考えると、もっと写真を豊富にしたり、専門用語の意味について、もっと分かりやすく説明した方が、具体的な状況をイメージしやすかったのではないかと思う。 たとえば、大学卒業を控えた高橋選手が、リクルートに入社を希望していたときに、「うちは大学生は入れない (P72)」の一言だけでは、「(なぜ高学歴だとダメなのか?)」という疑問を生じさせかねず、ひいては「(スポーツ選手は頭が悪い方が有利?)」といった誤解を引き起こしかねない。 また、小出監督が有森選手専属になり、「中距離選手の高橋は指導を受けられない (P80)」という記述では、ここでいう「中距離」の定義が不明で、混乱しかねない。
分かりやすく簡潔に記述することを優先するあまり、いささか言葉足らずになっている傾向が感じられたことが残念に思う。
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