著者 |
歌代幸子 |
出版社 |
理論社 |
出版年月 |
2005年1月 |
価格 |
\1,500 |
入手場所 |
市立図書館 |
書評掲載 |
2005年3月 |
評 |
★★★☆☆ |
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いまやオリンピックを始めとした国際大会で、日本のお家芸となった感のある女子マラソン。歴史が浅いこの種目での注目度を一気に高めたのが、高校時代に突如として現れ、長距離種目の日本記録を次々に塗り替えていった増田明美さんだった。
本書はジュニア世代を対象としたシリーズの一冊で、増田さんの生い立ちから現在に至るまでの半生を追いながら、困難に打ち克っていこうとする勇気や、努力することの大切さ、そして落ちこんでも明るく生きようとする前向きさといった道徳的な内容を、物語のなかに溶け込ませてやさしく説いている。 今では考えられないような、非科学的なトレーニングが当たり前とされていた女子マラソンの草創期に、貧血や疲労骨折といった肉体的なストレスだけではなく、日本中が彼女に注目するという過剰な期待から、プレッシャーにさいなまされる様子が痛々しいほどに描写されていて、シニア世代であっても心を動かされる場面が少なくない。 いまやマスメディアを通じて、底抜けに明るいおしゃべり解説者として有名だが、これを読むと彼女に対するイメージが大きく変わるかもしれません。なかでも、高校時代の同僚へのライバル心剥き出しの争いは、今の彼女からは想像もできません。
ジュニア世代にはやや言葉足らずでは、と感じる記述がいくつか気になったが、自らの汚点とも言えるような話なども微笑ましく語っている点に、彼女の人間的魅力がより引き出されたように感じる一冊です。
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