著者 |
平野隆彰 |
出版社 |
せせらぎ出版 |
出版年月 |
2000年9月 |
価格 |
\2,000 |
入手場所 |
bk1 |
書評掲載 |
2001年2月 |
評 |
★★★★☆ |
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濃紺のユニフォームで知られる、高校長距離界の名門「西脇工業」の監督、渡辺公二氏の半生と、指導理念等を、著者が取材を通じてまとめた書籍。 長い教員生活の中で、2度の連覇を含む7度の優勝(当時)を誇る全国高校駅伝を始め、数々の偉業を達成している名監督だが、その指導法は時代とともに変化していることが窺える。 特に、『鬼から仏へ』変わったと本人が語るように、練習量も20年前の『鬼』時代の6〜7割に減少し、細かい技術的なことにも口をはさまなくなったにもかかわらず、全国高校駅伝での高校最高記録の樹立を始めとして、それまで以上の実績をあげた理由はどこにあるのだろう? 監督はよく「うちの練習は特別なことはやらせていない」と、“マスコミ向けのコメント”と思われる発言を口にするが、小島宗幸選手ら、監督の教え子の話によると、どうも真実のようである。「特別な練習」をしなくても、高校長距離界の頂点に導いてしまう。そんな「心の監督術」の大切さ、指導の原点を教えてくれる一冊である。 残念な点は、トレーニングに関して、やや首をかしげる記述があること。「グリコーゲンが枯渇すると脂肪がエネルギー源となる (P92)」「適正ペースは、乳酸が生じないギリギリのスピード (P105)」など、この記述では運動生理学の試験ではペケをつけられるだろう(正しくは、グリコーゲンが枯渇したら脂肪はエネルギーになり得ないし、乳酸は運動中に常に生成されていて、運動強度が高くなると、乳酸除去が追いつかなくなり、蓄積されていく)。
個人的にはお勧めの一冊ではあるが、地方出版社の書籍であるため注文しないと手に入らない貴重な本です(私は生協で注文しても手に入らなかったので、オンライン書店で購入)。お値段もちょっと高め。
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